【MAツール編】生成AIは何を情報源にして「おすすめ」を答えるのか?
「おすすめのMAツールは?」と生成AIに尋ねると、AIはどこかのWebページを引用して答えを組み立てます。本稿は、その引用元をMAツール(マーケティングオートメーション)カテゴリに絞って定量的に集計したレポートです。シリーズ前回のメール配信システム編と同じ方法で計測し、カテゴリによる違いも見ていきます。
調査概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象AIモデル | ChatGPT / Gemini / Perplexity / Google AI Overviews |
| カテゴリ | MAツール(マーケティングオートメーション) |
| プロンプト数 | 72問(購買意図6タイプ × 各12問) |
| 観測引用数 | 1,607件(ユニークドメイン230件、計測期間内の累積) |
| 推薦対象ブランド | 14ブランド(同じ条件で比較) |
総合ドメインランキング TOP15
| # | ドメイン | タイプ | 引用数 | 出現率 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | shanon.co.jp(SHANON) | ベンダー公式 | 134 | 58% |
| 2 | list-finder.jp(List Finder) | ベンダー公式 | 115 | 53% |
| 3 | satori.marketing(SATORI) | ベンダー公式 | 81 | 38% |
| 4 | mazrica.com(Mazrica) | ベンダー公式 | 78 | 36% |
| 5 | bow-now.jp(BowNow) | ベンダー公式 | 76 | 32% |
| 6 | ferret-one.com(ferret One) | ベンダー公式 | 73 | 33% |
| 7 | growth-marketing.jp | ベンダー公式 | 67 | 31% |
| 8 | itreview.jp(ITreview) | レビュー | 66 | 29% |
| 9 | boxil.jp(BOXIL) | 比較メディア | 55 | 25% |
| 10 | e-sales.jp | ベンダー公式 | 45 | 20% |
| 11 | ebis.ne.jp | ベンダー公式 | 43 | 20% |
| 12 | hubspot.jp(HubSpot) | ベンダー公式 | 43 | 19% |
| 13 | salesforce.com | ベンダー公式 | 36 | 17% |
| 14 | goleadgrid.com | ベンダー公式 | 33 | 15% |
| 15 | it-trend.jp(ITトレンド) | 比較メディア | 30 | 14% |
上位はベンダー公式サイトがほぼ独占し、第三者メディアは8位のITreview、9位のBOXILがようやく顔を出す程度です。メール配信システムでは2位・6位に比較メディアが入っていたことと比べると、MAツールでは公式サイトの強さが際立ちます。
ドメインタイプ別の引用シェア
| タイプ | 引用数 | シェア |
|---|---|---|
| ベンダー公式サイト | 1,404 | 87.4% |
| 比較メディア | 120 | 7.5% |
| レビュー | 66 | 4.1% |
| その他(動画・SNS等) | 17 | 1.0% |
比較メディアとレビューを合わせても約12%で、引用の8〜9割はベンダー公式サイトです。前回のメール配信システム(第三者メディア約2割)と比べると、MAツールでは公式サイト依存がさらに強いことが分かります。
これは、MAツールが機能や料金体系が複雑で、一次情報(公式サイト)でしか正確に説明できないためだと考えられます。AIは、製品の仕様を語るときほど公式サイトを参照します。
ブランド推薦ランキング TOP10
AIの回答のなかで、ブランド名そのものが言及された割合です(14ブランドを同じ条件で比較)。
| # | ブランド | 推薦率 |
|---|---|---|
| 1 | BowNow | 62.0% |
| 2 | SATORI | 61.6% |
| 3 | HubSpot | 60.2% |
| 4 | List Finder | 52.8% |
| 5 | Kairos3 | 47.7% |
| 6 | SHANON | 43.1% |
| 7 | Marketo | 42.6% |
| 8 | Pardot | 30.1% |
| 9 | Salesforce Marketing Cloud | 16.7% |
| 10 | b→dash | 13.9% |
国産勢(BowNow・SATORI・List Finder・Kairos3・SHANON)が上位を占め、海外勢(HubSpotは例外的に3位)を上回りました。ここでも、ドメイン引用とブランド推薦のズレが見られます。たとえばSHANONは引用1位ですが推薦は6位、逆にHubSpotは引用12位ながら推薦3位です。ページが引用されることと、名前を呼ばれることは別であることが、ここでも確認できます。
AIモデルごとに異なる引用元
MAツールでは、メール配信ほどのモデル差は出ませんでした。いずれのモデルもベンダー公式サイトが中心です。違いが出たのはPerplexityで、ここだけレビューサイトのITreviewが上位に入りました。Perplexityが第三者の評価を引きやすい傾向は、メール配信編と共通しています。
購買意図フェーズ別の傾向
意図ごとに引用元の首位を見ると、MAツールではどの場面でもベンダー公式サイトが首位でした。「おすすめ」でも「比較」でも「信頼・評判」でも、SHANONやList Finderといった公式サイトが上位に来ます。
メール配信システムでは「信頼・評判」を尋ねるとレビュー・比較メディアが前面に出ましたが、MAツールでは信頼を確かめる場面でも公式サイトが中心で、ITreviewが補助的に続く構図でした。製品の中身が複雑なカテゴリほど、AIは一次情報に寄る、という傾向が読み取れます。
SaaSマーケターへの示唆
- MAツールは、まず自社公式サイトの作り込みが最優先になる:引用の約87%が公式サイトです。機能・料金・連携・導入要件を、AIが読み取りやすい構造で明記します。
- レビューサイト(ITreview)と比較メディア(BOXIL・ITトレンド)を二次的に押さえる:シェアは小さいものの、Perplexityや「比較」の場面で効きます。
- 「引用」と「推薦」を別の施策として設計する:公式ページの引用価値と、ブランドの想起は別物です。
- 狙うモデルで力点を変える:ChatGPTは公式サイト全般、Perplexityはレビューサイトも視野に入れます。
方法論と限界
- サンプル規模:72プロンプト(6意図×12問)です。順位の絶対値よりも、タイプ構成・モデル間差・カテゴリ間差の傾向を読むことをおすすめします。
- 推薦ランキングの範囲:登録した14ブランドの相対比較であり、網羅的な全ブランドシェアではありません。
- AI Overviewsの扱い:全体の引用集計には含めていますが、ChatGPT / Gemini / Perplexity のように1モデルとして単独の内訳には分けていません。AI Overviews は Google 検索結果上に表示される回答機能で、計測上、独立したモデルとして切り出すのが難しいためです。
- タイプ分類:各ドメインを「ベンダー公式 / 比較メディア / レビュー / その他」に自動分類した後、日本市場の文脈に合わせて手動で補正しています(例:ITトレンドを「比較メディア」、ITreview を「レビュー」など、自動分類で取りこぼしや誤分類が起きやすい媒体を補正)。
- 回答の揺らぎ:AIの回答は同じ質問でも都度変動するため、各購買意図カテゴリにつき言い回しの違う 12 問を投げ、揺らぎをならして平均的な傾向を捉えることを狙っています。固定したプロンプト集合での、競合との相対的な観測値として読んでください。
本稿は、AI検索における引用元の構造を領域横断で可視化するシリーズの第2弾(MAツール編)です。次回以降も領域を広げ、カテゴリ横断の統合ランキングへと発展させます。
よくある質問
生成AIはMAツールの質問で何を引用していますか?
引用全体の約87%はベンダー公式サイトで、比較メディアとレビューを合わせても約12%にとどまりました。メール配信システムの調査(第三者メディア約2割)よりも、公式サイトへの偏りが強い結果です。
MAツールでもAIモデルによって引用元は変わりますか?
メール配信ほど大きな差は出ませんでしたが、Perplexityはレビューサイト(ITreview)を引きやすく、ChatGPTは海外勢を含むベンダー公式サイトを優先する傾向が見られました。