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業界動向

【CRMツール編】生成AIは何を情報源にして「おすすめ」を答えるのか?

村上悠希 /Studio株式会社 マーケティング・事業開発 マネージャー

「おすすめのCRMツールは?」と生成AIに尋ねると、AIはどこかのWebページを引用して答えを組み立てます。本稿は、その引用元をCRMツールというひとつのカテゴリに絞って定量的に集計したレポートです。シリーズのこれまでのメール配信システム編MAツール編と同じ方法で計測し、カテゴリによる違いも見ていきます。

本稿は「CRMツール」1カテゴリ・72プロンプトの調査です。日本市場全体を代表する統計ではなく、特定カテゴリにおける引用元の構造を可視化することを目的としています。

調査概要

項目内容
対象AIモデルChatGPT / Gemini / Google AI Overviews
カテゴリCRMツール(顧客関係管理)
プロンプト数72問(購買意図6タイプ × 各12問)
観測引用数1,507件(ユニークドメイン246件、計測期間内の累積)
推薦対象ブランド14ブランド(同じ条件で比較)

プロンプトは、特定の言い回しによる偏りを避けるため、購買のプロセスに沿った6つの意図(おすすめ・比較・選び方・用途/機能・課題/条件・信頼/評判)に分け、各12問ずつ設計しています。

総合ドメインランキング TOP15

AIが引用した情報源を、ドメイン単位で集計したものです。タイプは日本市場向けに補正しています。

#ドメインサイト名タイプ引用数出現率
1saaske.comサスケベンダー公式7635%
2zoho.comZoho CRMベンダー公式7329%
3ec-force.comecforceベンダー公式7233%
4itreview.jpITreviewレビュー7233%
5yaritori.jpyaritoriベンダー公式5626%
6aspicjapan.orgアスピック比較メディア5425%
7chikyu.netGENIEE SFA/CRMベンダー公式5425%
8hubspot.jpHubSpotベンダー公式5424%
9salesforce.comSalesforceベンダー公式5324%
10bluetec.co.jpKnowledge Suiteベンダー公式4923%
11e-sales.jpeセールスマネージャーベンダー公式4822%
12comdec.jpコムデックベンダー公式4219%
13geniee.co.jpジーニーベンダー公式4219%
14it-trend.jpITトレンド比較メディア4219%
15boxil.jpBOXIL比較メディア4119%

ベンダー公式サイトが上位を占めますが、4位にレビューサイト(ITreview)、6位に比較メディア(アスピック)が入り、14位・15位にもITトレンド・BOXILが続きます。第三者メディアが、ベンダー公式と並ぶ引用源として上位に食い込んでいることが分かります。

ドメインタイプ別の引用シェア

タイプ引用数シェア
ベンダー公式サイト1,26684.0%
比較メディア15810.5%
レビュー744.9%
その他(動画・公的機関等)90.6%

CRMツールの領域では、AIは引用の約84%をベンダー公式サイトから取っています。一方で、比較メディアとレビューを合わせた第三者メディアは15.4%にのぼり、引用のおよそ6〜7回に1回は、アスピックやITトレンド、ITreviewといった第三者メディア経由です。

ここからは2つのことが読み取れます。

  • ベンダー側の本質:CRMは機能・料金体系が複雑で、一次情報(公式サイト)でしか正確に説明できないため、AIは製品の仕様を語るときほど公式サイトを参照します。自社公式サイトの情報設計が、いまも最大の引用源です。
  • 見落としやすい点:比較メディアやレビューサイトへの露出を放置すると、引用の約15%を取りこぼします。特に「比較」「信頼・評判」の場面で、この依存度が高まります。

カテゴリで違う、第三者メディアへの依存度

シリーズでこれまで計測した4カテゴリを並べると、第三者メディア(比較メディア+レビュー)の引用比率には、はっきりとした差が見られます。

カテゴリ第三者メディアの引用比率
メール配信システム20.5%
CRMツール15.4%
MAツール11.6%
Web広告運用代行4.4%

CRMツールは、メール配信システムに次いで第三者メディアへの依存度が高いカテゴリです。CRMは比較検討の論点(機能・連携・料金・サポート)が多く、ユーザーが「他社と並べて確かめたい」ニーズが強いため、AIも比較メディアやレビューを引きやすいと考えられます。逆に、製品の中身が定型化しやすいWeb広告運用代行では、AIはほぼベンダー公式だけで答えを組み立てていました。

ブランド推薦ランキング TOP10

AIの回答のなかで、ブランド名そのものが言及された割合です(14ブランドを同じ条件で比較)。

#ブランド推薦率
1HubSpot72.7%
2Zoho CRM69.9%
3Salesforce67.1%
4GENIEE SFA/CRM52.8%
5kintone50.5%
6eセールスマネージャー46.3%
7Mazrica Sales23.1%
8Dynamics 36515.7%
9Sansan13.0%
10Pipedrive7.9%

メール配信やMAツールでは国産勢が上位を占めましたが、CRMでは様相が異なります。HubSpot・Zoho CRM・Salesforce というグローバル製品が上位3位を独占し、国産勢(GENIEE SFA/CRM・kintone・eセールスマネージャー)がそれに続く構図です。CRMは世界共通の製品カテゴリとして語られやすく、AIの学習データに含まれるグローバル製品の露出が、そのまま推薦率に反映されていると考えられます。

引用されることと、名前を呼ばれることは違う

本調査でも、ドメイン引用とブランド推薦のズレが観測されました。

ブランドドメイン引用ブランド推薦読み取れること
kintone(cybozu.co.jp)圏外(19位)5位(50.5%)公式サイトの引用は少ないが、名前は広く挙がる
HubSpot8位1位(72.7%)引用は中位だが、最も推薦される
Zoho CRM2位2位(69.9%)引用・推薦ともに上位で一致
サスケ / ecforce1〜3位計測対象外引用は最多級だが、登録ブランド外で推薦は未計測

AIにページを参照させることと、製品名を語らせることは、別々の取り組みです。kintone のように公式ドメインの引用は多くないのに名前は広く挙がるブランドもあれば、サスケ・ecforce のようにページは最も多く引用されながら、回答テキストでは製品名として前に出にくいブランドもあります(なお、サスケ・ecforce・yaritori は今回の登録14ブランドに含めていないため、推薦率は計測対象外です)。引用価値(コンテンツ)と推薦(ブランドの想起)は、別の施策として設計する必要があります。

AIモデルごとに異なる引用元

同じカテゴリの質問でも、どのAIに聞くかで、引用されるドメインの顔ぶれが変わります。

順位ChatGPTGemini
1zoho.comsaaske.com
2salesforce.comec-force.com
3hubspot.jpitreview.jp
4cybozu.co.jpyaritori.jp
5prtimes.jpaspicjapan.org
  • ChatGPTは大手ブランドの公式寄り:Zoho・Salesforce・HubSpot・kintone(cybozu.co.jp)といった知名度の高い製品の公式サイトと、PRリリース(PR TIMES)を優先します。
  • Geminiは国産専業+第三者メディア寄り:サスケ・ecforce・yaritori など国産専業ベンダーの公式サイトを広く拾いつつ、ITreview(レビュー)やアスピック(比較メディア)も上位に入ります。

Geminiの方が第三者メディアを引きやすい傾向は、メール配信編・MA編とも共通しています。ChatGPTを狙うなら大手として認知される公式情報の整備、Geminiを狙うなら専業ベンダーの公式サイトに加えてレビュー・比較メディアへの露出と、打ち手はモデルごとに分かれます。

(注:本カテゴリでは Perplexity の観測引用が今回のrunでは得られなかったため、モデル別の比較は ChatGPT / Gemini の2モデルで示しています。)

購買意図フェーズ別の傾向

CRMツールでも、引用元の首位はどの意図でもベンダー公式サイトでした。一方で、第三者メディア(ITreview・アスピック・ITトレンド・BOXIL)は、「比較」「信頼・評判」を尋ねる場面で相対的に前に出やすい構図です。製品の仕様や条件を確かめる「用途・機能」「課題・条件」ではAIは一次情報である公式サイトに寄り、他社と並べて検討する局面でこそ第三者メディアの引用が効く、という傾向が読み取れます。

SaaSマーケターへの示唆

  • 「引用」と「推薦」を別の施策として設計する:ページが引用されること(コンテンツ)と、AIに推薦されること(ブランド名が回答テキストに登場すること)は別物です。事業者が最終的に求めるのは推薦であり、引用はその前提条件にすぎません。
  • CRMはまず自社公式サイトの作り込みが土台になる:引用の約84%が公式サイトです。機能・料金・連携・導入要件を、AIが読み取りやすい構造で明記しておくのが起点になります。
  • 比較メディア(アスピック・ITトレンド・BOXIL)とレビュー(ITreview)を二次的に押さえる:第三者メディアの比率は15.4%とMAツールより高く、特に「比較」「信頼・評判」の場面で効きます。
  • 狙うAIモデルで力点を変える:ChatGPTは大手として認知される公式情報の整備、Geminiは専業ベンダーの公式サイトと第三者メディアへの露出が効きます。

方法論と限界

  • サンプル規模:72プロンプト(6意図×12問)です。順位の絶対値よりも、タイプ構成・モデル間差・カテゴリ間差の傾向を読むことをおすすめします。
  • 推薦ランキングの範囲:登録した14ブランドの相対比較であり、網羅的な全ブランドシェアではありません。引用上位でも未登録のブランド(サスケ・ecforce・yaritori 等)は推薦率の計測対象外です。
  • Perplexity・AI Overviewsの扱い:全体の引用集計にはGoogle AI Overviewsを含めていますが、ChatGPT / Gemini のように1モデルとして単独の内訳には分けていません。Perplexityは今回のrunでは観測引用が得られませんでした。
  • タイプ分類:各ドメインを「ベンダー公式 / 比較メディア / レビュー / その他」に自動分類した後、日本市場の文脈に合わせて手動で補正しています(例:ITトレンド・アスピック・BOXILを「比較メディア」、ITreviewを「レビュー」など)。なお登録ブランドの公式ドメインも「ベンダー公式サイト」に含めて集計しています。
  • 回答の揺らぎ:AIの回答は同じ質問でも都度変動するため、各購買意図カテゴリにつき言い回しの違う12問を投げ、揺らぎをならして平均的な傾向を捉えることを狙っています。固定したプロンプト集合での、競合との相対的な観測値として読んでください。

本稿は、AI検索における引用元の構造を領域横断で可視化するシリーズの第4弾(CRMツール編)です。次回以降も領域を広げ、カテゴリ横断の統合ランキングへと発展させます。

よくある質問

生成AIはCRMツールの質問で何を引用していますか?

引用全体の約84%はベンダー公式サイトで、比較メディア(約10.5%)とレビュー(約4.9%)を合わせた第三者メディアは約15%でした。MAツール(約12%)よりは高く、メール配信システム(約2割)に次ぐ2番目の水準です。

CRMでもAIモデルによって引用元は変わりますか?

変わります。ChatGPTはZoho・Salesforce・HubSpot・kintoneなど大手ブランドの公式サイトに偏り、Geminiは国産専業ベンダーの公式サイトを広く拾いつつ、ITreview(レビュー)やアスピック(比較メディア)といった第三者メディアも上位に引く傾向が見られました。

執筆者

Studio株式会社 マーケティング・事業開発 マネージャー

村上悠希

BtoB SaaS企業のマーケティング全般と事業開発を統括。Web広告・SEO/AEO・CRMなどのオンライン施策、セミナー・カンファレンス・展示会などのオフライン施策を一貫して管掌しつつ、パートナーアライアンスや新規事業開発も兼任。

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