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業界動向

【メール配信システム編】生成AIは何を情報源にして「おすすめ」を答えるのか?

村上悠希 /Studio株式会社 マーケティング・事業開発 マネージャー

ChatGPTやGemini、Perplexityに「おすすめのメール配信システムは?」と聞く。いまや製品選定のスタート地点は、検索結果の青いリンクではなく、AIが返す要約された答えになりつつあります。そしてその答えは、AIがどこかのWebページを引用して組み立てられています。

つまり、自社がAIに引用される情報源を押さえているかどうかが、見込み客と出会う新しい分かれ目になります。本稿ではその実態を、メール配信システムというひとつのカテゴリに絞って定量的に集計しました。

調査概要

項目内容
対象AIモデルChatGPT / Gemini / Perplexity / Google AI Overviews
カテゴリメール配信システム
プロンプト数72問(購買意図6タイプ × 各12問)
観測引用数4,456件(ユニークドメイン244件、計測期間内の累積)
推薦対象ブランド20ブランド(同じ条件で比較)

プロンプトは、特定の言い回しによる偏りを避けるため、購買のプロセスに沿った6つの意図(おすすめ・比較・選び方・用途/機能・課題/条件・信頼/評判)に分け、各12問ずつ設計しています。

総合ドメインランキング TOP15

AIが引用した情報源を、ドメイン単位で集計したものです。タイプは日本市場向けに補正しています。

#ドメインサイト名タイプ引用数出現率
1blastengine.jpブラストエンジンベンダー公式26845%
2it-trend.jpITトレンド比較メディア26445%
3benchmarkemail.comBenchmark Emailベンダー公式26145%
4meruhaikun.comメール商人ベンダー公式25644%
5synergy-marketing.co.jpSynergy!(シナジー)ベンダー公式24341%
6aspicjapan.orgアスピック比較メディア23340%
7baremail.jpベアメールベンダー公式18933%
8satori.marketingSATORIベンダー公式18532%
9shikuminet.comシクミネットベンダー公式18332%
10cuenote.jpCuenoteベンダー公式17025%
11webcas.jpWEBCASベンダー公式16921%
12itreview.jpITreviewレビュー16628%
13hai2mail.jp配配メールベンダー公式14322%
14willcloud.jpWiLL Mailベンダー公式10618%
15blastmail.jpブラストメールベンダー公式10117%

ベンダー公式サイトが上位を占めますが、2位・6位に比較メディア(ITトレンド、アスピック)が入り、12位にレビューサイト(ITreview)が続きます。第三者メディアが、ベンダー公式と並ぶ引用源になっていることが分かります。

ドメインタイプ別の引用シェア

タイプ引用数シェア
ベンダー公式サイト3,52379.1%
比較メディア74816.8%
レビュー1663.7%
その他(公的機関・SNS等)190.4%

メール配信システムの領域では、AIは依然としてベンダー公式サイトを最も多く引用しています(約79%)。一方で、比較メディアとレビューを合わせると20.5%にのぼり、引用のおよそ5回に1回は、アスピックやITトレンド、ITreviewといった第三者メディア経由です。

ここからは2つのことが読み取れます。

  • ベンダー側の本質:自社公式サイトの情報設計(製品ページ・料金ページの分かりやすさ)が、いまも最大の引用源です。
  • 見落としやすい点:比較メディアやレビューサイトへの露出を放置すると、引用の約2割を取りこぼします。特に後述する「比較」「信頼・評判」の場面で、この依存度が高まります。

引用を稼ぐのは、媒体の「比較ページ」

同じ媒体でも、AIが引用するのはトップページばかりではありません。ドメインの中で実際に引用されたURLを見ると、引用は特定の比較・ランキングページに集中していました。

媒体最も引用された記事ページ引用数
ITトレンド/mail_delivery/article/28-0008(メール配信システムの比較記事)98
アスピック/asu/article/928(メール配信システムの比較記事)171
ITreview/categories/email-delivery(カテゴリ別ランキング)63

つまり、媒体に「載る」こと自体より、その媒体の比較ページ・ランキングページに製品が並ぶことが引用の実体です。AIは、製品が一覧・スコア化されたページを優先して参照します。掲載先を選ぶときは、媒体名だけでなく「どの比較ページに、どんな並びで載るか」まで見る必要があります。

ブランド推薦ランキング TOP10

AIの回答のなかで、ブランド名そのものが言及された割合です(20ブランドを同じ条件で比較)。

#ブランド推薦率
1ブラストメール57.6%
2WEBCAS51.7%
3WiLLMail50.0%
4配配メール46.9%
5Benchmark Email45.5%
6Cuenote FC43.1%
7SendGrid19.8%
8HubSpot17.7%
9Mailchimp17.4%
10アララメッセージ17.0%

国産勢(ブラストメール・WEBCAS・WiLLMail・配配メール・Cuenote)が上位を占め、海外勢(SendGrid・Mailchimp)を推薦率で上回っています。一方で、日本語で尋ねてもSendGrid・Mailchimpが2割前後で登場する点も見逃せません。

引用されることと、名前を呼ばれることは違う

本調査でとくに示唆的だったのが、ドメイン引用とブランド推薦のズレです。

ブランドドメイン引用ブランド推薦読み取れること
メール商人4位20位(0.4%)ページは多く引用されるが、製品名はほぼ答えに出ない
blastengine1位11位(13.5%)サイトの引用は最も多いが、推薦は弱い
WEBCAS11位2位(51.7%)引用は中位だが、推薦されやすい

AIにページを参照させることと、製品名を語らせることは、別々の取り組みです。前者はコンテンツの引用価値で決まりますが、後者は「ブランドの想起」や「評判」だけでは説明しきれません。

ここで仮説を実測で検証してみました。AIが最も多く引用していた第三者メディアの上位 5 記事(ITトレンド・アスピック・ITreview の比較/ランキング記事)について、各ページ内で各ブランドが何回言及されているかを実際に数え、ページの引用回数で重み付けして合算した「メディア言及スコア」を、本調査のブランド推薦率と並べたものが下表です。

ブランドメディア言及スコア推薦率(本調査)
ブラストメール9,47857.6%
配配メール / 楽楽メール6,65847.9%
WiLL Mail3,67050.0%
WEBCAS3,56757.3%
Cuenote FC3,10342.7%
blastengine2,68813.5%
SendGrid1,85422.9%
Mailchimp1,63818.8%
Benchmark Email1,59345.5%
メール商人 / める配くん1,3450.4%

第三者メディアでの言及量が多いブランドほど AI に推薦される、という傾向が明確に観測されました。上位 5 ブランドはそのまま推薦率の上位 6 位とほぼ対応しており、「第三者メディア内での言及量」が AI 推薦の最大の駆動因子であることが裏付けられます。

一方で、いくつかの外れ値も見えてきました。

  • HubSpot や Benchmark Email(国内メディアでの言及は少なめだが推薦率は高い):日本語の比較メディアでの言及量は小さい一方、AI の学習データに含まれるグローバル製品としての露出が補完していると考えられます。
  • メール商人(メディアでは「める配くん」として 3 件以上言及されているのに、推薦率は 0.4%):実際の比較メディアでは「める配くん」という別表記で言及されているため、本調査の brand 名検出(domain と「メール商人」だけで照合)に引っかかっていない可能性があります。ブランドの旧称・愛称・英字表記をどこまでカバーするかが、推薦率の計測精度に直結することが見えてきました。

実務的な含意は明確です。公式サイトの引用を取りに行くだけでは、ブランドが推薦される状態には届きません。第三者メディアの比較・レビュー記事内で、自社ブランド名(および別表記)が他社と並んで言及される状態を作ることが、AI に推薦されるための最大のレバーになります。

AIモデルごとに異なる引用元

同じカテゴリの質問でも、どのAIに聞くかで、引用されるドメインの顔ぶれが大きく変わります。

順位ChatGPTGeminiPerplexity
1webcas.jpblastengine.jpaspicjapan.org
2cuenote.jpbenchmarkemail.comsynergy-marketing.co.jp
3hai2mail.jpbaremail.jpit-trend.jp
4meruhaikun.comit-trend.jpmeruhaikun.com
5cocoo.co.jpitreview.jpshikuminet.com
  • ChatGPTはベンダー公式寄り:WEBCAS・Cuenoteなど製品サイトを優先します。
  • Perplexityは比較メディア寄り:アスピック・ITトレンドが上位に来ます。
  • Geminiはその中間:公式が中心ですが、比較メディアのITトレンドやレビューサイトのITreviewも引きます。

AI検索対策をひとくくりにはできません。Perplexityでの露出を狙うなら比較メディアへの掲載、ChatGPTを狙うなら自社公式サイトの作り込みと、打ち手はモデルごとに分かれます。

ではなぜこのモデル間の差が生まれるのか。現時点では確定的な要因とは言えませんが、いくつかの仮説があります。

  • 裏側で使う検索基盤の差:ChatGPT は Bing、Gemini は Google、Perplexity は独自の検索基盤を使っており、それぞれの SERP に出やすい情報源の構成(公式優位 / 比較優位)が、そのまま AI 回答の引用元構成に反映されている可能性。
  • 引用元選定ポリシーの差:Perplexity は「複数視点・第三者の引用」を製品コンセプトとして強調しており、結果として比較メディアの引用比率が高くなっている可能性。一方で ChatGPT は「権威性のある一次情報」を重視するチューニングがされている可能性。
  • プロンプトの検索クエリ書き換えの差:「おすすめのメール配信システム」という同じ質問でも、各モデルが内部的にどんな検索クエリへ書き換えているか(製品名指向 vs 比較記事指向)で、ヒットする URL の構成が変わる可能性。

このうち「検索クエリの書き換え」は、AIが回答前に裏で実行する検索(クエリファンアウト)を記録することで、一部を実測できました。1つの質問が、裏で平均いくつの検索に展開されるかを見たものが下表です。

モデル1問あたりの平均検索数最大
Google AI Overviews2.384
Gemini2.383
ChatGPT1.001
Perplexity計測対象外

Google系(AI Overviews・Gemini)は、1つの質問を平均2.4個の検索に展開していました。たとえば「おすすめのメール配信システム」が、裏では「メール配信システム 日本」「メールマーケティングツール 比較」のように複数の切り口へ分かれます。一方、本調査のChatGPT(gpt-4o-miniベース)はちょうど1回でした。「1つの質問=1つの検索」という前提は、少なくともGoogle系では崩れています。

展開される検索の数だけ、AIは多様なページに当たります。Google系で比較メディアが引用されやすいのは、この「複数の切り口への展開」が、比較記事にヒットする機会を増やしている可能性があります。検索クエリの書き換えの差が、引用元の差の一因になっていることが、データからも示唆されました。

(注:Perplexity は内部の検索クエリを外部に公開しない設計のため、本計測では検索数を取得できていません。実際には内部で検索を行っています。ChatGPT の数値は、計測に用いたモデル構成に依存します。)

これらの仮説は、シリーズの後続記事で、モデル別の検索クエリ挙動や引用元の重なりを観測しながら検証を続けていきます。

購買意図ごとのメディア依存度

購買意図 6 タイプごとに、AIが引用するソースのタイプ構成を集計しました。フェーズによって AI が頼る情報源が大きく変わることが分かります。

購買意図ベンダー公式比較メディアレビュー
おすすめ79%14%6%
比較72%23%5%
選び方83%15%1%
用途・機能85%13%1%
課題・条件84%14%2%
信頼・評判73%19%8%

特徴は両端に出ます。

  • 「用途・機能」「課題・条件」起点はベンダー公式が突出(85% / 84%)。製品の仕様や具体条件には、AI は一次情報である公式サイトに頼ります。
  • 「比較」では比較メディアの依存度が最大化(23%)。AI が「他社と並べて」と求められると、比較メディアの引用比率が他フェーズより明確に高くなります。
  • 「信頼・評判」ではレビューの依存度が最大化(8%)。「口コミ評価の高い」「評判が良い」を尋ねると、AI は中立的な第三者(レビューサイト)を根拠にしようとします。

意思決定の最終局面、つまり「比較」「信頼・評判」の段階でこそ、第三者メディアの引用が効きます。ここを押さえられているかどうかが、最後のひと押しを左右します。

SaaSマーケターへの示唆

  • 「引用」と「推薦」を別の施策として設計する:ページが引用されること(コンテンツ)と、AIに推薦されること(ブランド名が回答テキストに登場すること)は別物です。事業者が最終的に求めるのは「推薦」であり、引用はその前提条件にすぎません。
  • 公式サイトを「AIに推薦されるための土台」として整備する:引用全体の約79%は公式サイトです。推薦されるためにはまず引用源として安定的に参照される状態が必要で、製品・料金・連携・導入要件などの一次情報をAIが読み取りやすい構造で明記しておくのが起点になります。
  • 比較メディアへの掲載と情報更新を、外部施策の優先課題にする:特にPerplexityと、「比較」「信頼」の場面で効きます。掲載は媒体名だけでなく、引用が集中する「カテゴリ比較ページ・ランキングページ」に製品が並んでいるかまで確認します。
  • レビューサイト(ITreview等)でレビューを獲得する:「評判・信頼」の場面で最大の引用源になります。
  • 狙うAIモデルで施策を変える:ChatGPTは公式の作り込み、Perplexityは比較メディアへの露出が効きます。

方法論と限界

  • サンプル規模:72プロンプト(6意図×12問)です。順位の絶対値よりも、タイプ構成・モデル間差・意図間差の傾向を読むことをおすすめします。
  • 推薦ランキングの範囲:登録した20ブランドの相対比較であり、網羅的な全ブランドシェアではありません。
  • AI Overviewsの扱い:全体の引用集計には含めていますが、ChatGPT / Gemini / Perplexity のように1モデルとして単独の内訳には分けていません。AI Overviews は Google 検索結果上に表示される回答機能で、計測上、独立したモデルとして切り出すのが難しいためです。
  • タイプ分類:各ドメインを「ベンダー公式 / 比較メディア / レビュー / その他」に自動分類した後、日本市場の文脈に合わせて手動で補正しています(例:ITトレンドを「比較メディア」、ITreview を「レビュー」など、自動分類で取りこぼしや誤分類が起きやすい媒体を補正)。
  • 回答の揺らぎ:AIの回答は同じ質問でも都度変動するため、各購買意図カテゴリにつき言い回しの違う 12 問を投げ、揺らぎをならして平均的な傾向を捉えることを狙っています。固定したプロンプト集合での、競合との相対的な観測値として読んでください。

本稿は、AI検索における引用元の構造を領域横断で可視化するシリーズの第1弾(メール配信システム編)です。次回以降、MA・CRM など領域を広げ、カテゴリ横断の統合ランキングへと発展させます。

よくある質問

生成AIはメール配信システムの質問で何を引用していますか?

引用全体の約79%はベンダー公式サイト、約21%が比較メディア・レビューサイトなどの第三者メディアでした。特に「比較」「信頼・評判」を尋ねる質問ほど、第三者メディアの引用比率が高まります。

AIモデルによって引用元は変わりますか?

大きく変わります。ChatGPTはベンダー公式サイトを優先し、PerplexityはアスピックやITトレンドなどの比較メディアを優先し、Geminiはその中間でレビューサイトも引きます。

AIは1つの質問で何回くらい検索していますか?

Google AI OverviewsとGeminiは1つの質問を平均2.4回の検索に展開していました(最大4回)。一方ChatGPTは1回でした。1つの質問が裏で複数の検索に分かれるため、Google系では多様なページが引用されやすくなります。

執筆者

Studio株式会社 マーケティング・事業開発 マネージャー

村上悠希

BtoB SaaS企業のマーケティング全般と事業開発を統括。Web広告・SEO/AEO・CRMなどのオンライン施策、セミナー・カンファレンス・展示会などのオフライン施策を一貫して管掌しつつ、パートナーアライアンスや新規事業開発も兼任。

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