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業界動向

生成AIは、購買フェーズによって引用する情報源を変えるのか?──7カテゴリ横断のファネル分析

村上悠希 /Studio株式会社 マーケティング・事業開発 マネージャー

これまでのシリーズでは、メール配信システム・MAツール・CRMなど、カテゴリごとに「生成AIが何を引用して答えるか」を集計してきました。本稿はその横断分析です。問いはひとつ、「同じカテゴリでも、聞き方(購買フェーズ)が変わると、AIが引用する情報源は変わるのか」

結論を先に言えば、変わります。検討の入口(基礎・機能)ではベンダー公式サイトに、意思決定の手前(比較・評判)では比較メディアとレビューサイトに、AIは寄っていきます。7カテゴリ・6フェーズを横断して、その構造を定量化しました。

本稿は7カテゴリ(メール配信システム / MAツール / Web広告運用代行 / CRMツール / 請求書受領システム / 支払管理システム / 工数管理ツール)の横断集計です。日本市場全体を代表する統計ではなく、設計したプロンプト集合における引用元の構造を可視化することを目的としています。

調査概要

項目内容
対象AIモデルChatGPT / Gemini / Perplexity / Google AI Overviews
カテゴリ7カテゴリ(メール配信・MA・Web広告運用代行・CRM・請求書受領・支払管理・工数管理)
購買フェーズ6タイプ(おすすめ / 比較 / 選び方・基礎 / 用途・機能別 / 課題・条件 / 信頼・評判)
プロンプト数各カテゴリ72問(6フェーズ × 各12問)=計504問
集計方法各カテゴリを同じ重みで平均(計測回数の多いカテゴリに結果が偏らないよう調整)

フェーズでドメインタイプの構成は変わる

各フェーズで、AIが引用したドメインのタイプ構成(ベンダー公式 / 比較メディア / レビュー)を、7カテゴリの平均として集計しました。右2列の「平均比」は、全フェーズの平均を1.0としたときの倍率です。1.0を超えるほど、そのフェーズでそのタイプが平均より多く引かれていることを表します(例:1.52=平均の1.52倍)。

フェーズベンダー公式%比較メディア%レビュー%比較 平均比レビュー 平均比
選び方・基礎86.39.71.90.810.49
用途・機能別87.07.62.10.640.53
課題・条件84.09.53.10.800.77
おすすめ78.612.34.71.041.18
比較74.818.14.91.521.23
信頼・評判75.814.27.11.191.79

全体平均はベンダー公式81.1% / 比較メディア11.9% / レビュー4.0%です。ここから読み取れるのは、次の3点です。

  • 「選び方・基礎」「用途・機能」では、ベンダー公式が突出する(86〜87%)。製品の定義・仕様・機能を尋ねる場面では、AIは一次情報である公式サイトに頼ります。比較メディアもレビューも、ここでは平均を下回ります(平均比1.0未満)。
  • 「比較」では、比較メディアが最大化する(平均の1.52倍)。「他社と並べて」と求められた瞬間に、アスピックやITトレンドのような比較メディアの引用比率が跳ね上がります。
  • 「信頼・評判」では、レビューが最大化する(平均の1.79倍)。「口コミ」「評判」を尋ねると、AIは中立的な第三者であるレビューサイトを根拠にしようとします。

ファネルで見ると、意思決定に近づくほど第三者メディアが効く

6フェーズを購買ファネルの3段階にまとめると、傾向はさらにはっきりします。

段階ベンダー公式%比較メディア%レビュー%
TOFU(基礎・情報収集)86.39.71.9
MOFU(比較検討)80.112.73.9
BOFU(条件・評判で意思決定)79.911.95.1

入口(TOFU)ではベンダー公式が86.3%とほぼ独占ですが、意思決定に近づく(MOFU→BOFU)ほど第三者メディアの比率が上がり、特にレビューはTOFUの1.9%からBOFUの5.1%へと約2.7倍になります。「最後のひと押し」の局面ほど、AIは第三者の声を引くということです。

横断で強いのは、ベンダー公式ではなく媒体

では、具体的にどのドメインがフェーズごとに強いのか。7カテゴリ中いくつのカテゴリで上位に登場したか(出現領域数)で見ると、全フェーズ・ほぼ全カテゴリで横断的に強いのは、ベンダー公式サイトではなく比較メディアとレビューサイトでした。ベンダー公式は各カテゴリの中では強くても、登場するのは自分のカテゴリだけ(出現領域数2〜4)にとどまります。

横断で強い4媒体について、フェーズごとの平均出現率(そのフェーズのプロンプトで、そのドメインが引用された割合)を並べると、媒体ごとに「効くフェーズ」がはっきり分かれます(太字は各媒体のピーク)。

媒体タイプおすすめ比較選び方機能課題信頼・評判
aspicjapan.org(アスピック)比較メディア34.736.317.429.126.028.7
itreview.jp(ITreview)レビュー36.432.911.018.124.946.6
boxil.jp(BOXIL)比較メディア25.632.013.710.917.427.7
it-trend.jp(ITトレンド)比較メディア26.127.716.313.619.926.9
  • 比較メディア(アスピック・BOXIL・ITトレンド)は「比較」フェーズがピーク。製品を一覧・スコア化したページが、比較の質問に最もヒットします。
  • ITreviewは「信頼・評判」フェーズで46.6%と突出。口コミ・評価を尋ねる場面で、横断的に最も引かれる単一ドメインです。
  • どの媒体も「選び方・基礎」では落ち込む。基礎・定義の質問では、媒体よりベンダー公式の一次情報が優先されるためです。

基礎・機能フェーズでは、各カテゴリの公式が局所的に効く

第三者メディアが沈む「用途・機能別」フェーズでは、代わりに各カテゴリのベンダー公式サイトが相対的に強くなります。全フェーズ平均と比べると、機能フェーズでは freee.co.jp(平均の2.12倍)や invox.jp(1.52倍)といった製品公式サイトが、基礎フェーズでは bill-one.com(1.94倍)が、平均より明確に強くなります。

つまり構図はこうです。横断で安定して強いのは媒体(比較・レビュー)。一方、機能や基礎を語る局面では、各カテゴリの公式サイトが局所的に主役になる。フェーズによって、AIが頼る情報源の「層」が入れ替わります。

マーケターへの示唆

  • フェーズごとに打ち手を分ける:基礎・機能の質問で引用されたいなら自社公式サイトの情報設計(製品定義・機能・仕様の明記)が要、比較・評判の質問で引用されたいなら比較メディア・レビューサイトでの露出が要です。1つの施策で全フェーズはカバーできません。
  • 意思決定に近い「比較」「信頼・評判」こそ第三者メディア:最後のひと押しの局面で、AIは比較メディアとレビューを引きます。アスピック・ITトレンド・BOXILの比較ページに製品が並び、ITreviewでレビューが集まっている状態をつくることが、AI経由の指名につながります。
  • レビュー獲得は「信頼・評判」対策として最もレバレッジが高い:ITreviewは信頼・評判フェーズで突出した引用源です。レビューの量と鮮度を保つことが、この局面で効きます。
  • 基礎・機能ページは自社公式で取りに行く:媒体が弱まるフェーズなので、製品公式サイトの「とは」「機能」「比較(自社視点)」ページを、AIが読み取りやすい構造で整えておくと局所的に勝てます。

方法論と限界

  • サンプル規模:7カテゴリ・各72問のパイロット調査です。
  • 回答の揺らぎ:AIの回答は同じ質問でも都度変動します。固定したプロンプト集合における、相対的な観測値として解釈してください。

本稿は、AI検索における引用元の構造を領域横断で可視化するシリーズの横断分析編です。カテゴリ別の引用元ランキング(メール配信・MA・Web広告・CRM ほか)とあわせてお読みください。

よくある質問

生成AIは購買フェーズによって引用する情報源を変えますか?

変えます。7カテゴリを横断して集計すると、「選び方・基礎」「用途・機能」を尋ねるフェーズではベンダー公式サイトの引用比率が86〜87%まで高まり、「比較」では比較メディア、「信頼・評判」ではレビューサイトの比率が相対的に最大化しました。検討の入口は一次情報、意思決定の手前は第三者メディア、という役割分担が見られます。

どのフェーズでも横断的に強い情報源はどこですか?

アスピック・ITトレンド・BOXILといった比較メディアと、ITreviewというレビューサイトです。これらは7カテゴリのほぼ全フェーズで上位に入りました。特にITreviewは「信頼・評判」フェーズで平均出現率46.6%と突出します。一方ベンダー公式サイトは、各カテゴリの中では強くても、横断では特定カテゴリに限られる傾向でした。

執筆者

Studio株式会社 マーケティング・事業開発 マネージャー

村上悠希

BtoB SaaS企業のマーケティング全般と事業開発を統括。Web広告・SEO/AEO・CRMなどのオンライン施策、セミナー・カンファレンス・展示会などのオフライン施策を一貫して管掌しつつ、パートナーアライアンスや新規事業開発も兼任。

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